Reflection of 0mix
この文書はGitHub上にもあります。
For English users: auto translation on Scrapbox sucks. You should be better looking into the GitHub one to use the translator. It's pretty much a same article.
Emix
https://www.youtube.com/watch?v=SYG9zU_bd6U
EmixというDemo。
今まで見た中でもっとも"素晴らしい"Demoではない。技術的に突出しているわけではない。なんなら別に、64kでさえない。 ただ、とても洗練されたDemo。やるべきことが明確で、それを適切に行ったDemo。僕の心の中にずっと住み続けているDemo。
いずれも、複数のテクノトラックにより構成されるDJプレイに、VJ的なビジュアルが添えられる作品。
ナイトクラブにおける音楽・映像体験を明確に意識した作品。
私は明確に、そこを目指しに行った。
64k
64KB Introという戦場。
https://www.youtube.com/watch?v=O3T1-nadehU
私の場合は、Browser。
実行ファイルはスクリプトで記述され、バイナリであるWindows等に対してアドバンテージは少ないものの、 ウインドウの初期化は当然いらないし、SVGのレンダリング・OpusのDecode等のAPIが充実している。 とはいえ、音楽・動画のファイルサイズと比較して、64KBというのがあまりに小さすぎる容器であることは、誰でも理解している。
そういう意味で私は、64kとは「ほぼ全てのコンテンツがプロシージャルである」という判子だと思っている。
どれも付け焼き刃ではあるが、一応自分の武器として振れるようにはなってきた。
残念ながら私がこれまで身につけてきてしまった技術スタックをフルに活用できるフィールドが64kくらいしかないのである。
これは呪いだ。
Techno
私はそこまでTechnoに精通しているわけではない。
音ゲーのバックグラウンドがあるので、まあこういう音楽だろうな、というくらいの認識。
今回の作品を作るにあたり、インターネットでTechnoを掘った。
掘り方が決して適切ではないなとも思うし、これでもまだ不十分であるなという感覚はある。
https://www.youtube.com/watch?v=HOzFF47uYEg
4つ打ちで鳴り続けるキック・地を這うベースの低音の上を、無機質な音が鳴り続ける。
曲を構成していく上で、いかに音を気持ちよく聴かせるか、ということが重要視される。
音から得られる身体的な感覚が唯一の手がかり、とでも言うべきか。
音作りについて、Yan Cook氏がYouTubeにアップロードしている動画群が大いに参考になった。 極めて抽象的な音を、様々なシンセサイザー・エフェクターを用いて作り出す。
まるで彫刻のようなプロセスだと感じた。
https://youtu.be/hGvDsPVuWPo
Yan Cookによる、Wavetable SynthからTechnoを生み出すチュートリアル Machine Live
Machine Live。
全能のコンピュータを使うのではなく、あえて限られたハードウェアのセットで行われる音楽パフォーマンス。
目の前で物理的感覚を持って操作されるボタンやノブ。ラップトップの上蓋で遮られることのない手札。
https://www.youtube.com/watch?v=yMfbX6714j0
STOORによる7時間弱のTechno Machine Live サンプルが使えなくて、全トラックアナログかデジタルのオシレータで構成される変態マシン。
今回私がやりたかったこととの相性はピッタリだった。
Elektron製品は初めて触ったが、その操作性や哲学には驚かされた。
限られたパラメータで音作りを楽しむ世界観・直感的な操作で複雑なシーケンスプログラムを組める感触。
https://www.youtube.com/watch?v=XCpPdygkts4
Elektron Syntaktのデモ動画
チップチューン・減算・ウェーブテーブル・FM・サンプラーと、幅広いインストゥルメントを搭載する。
TrackerのUI自体が初体験だったが、確かにこのインタフェースなら、方向キーとボタン4つだけで曲がしっかり作れるものだなと感心した。
https://www.youtube.com/watch?v=Q6C_eT9bxYE
どっちも、触って「ぼくはGLSLでいいかな」となった。マジの異常者。
ただ、パフォーマンスや音作りの参考にはなった。
GLSL Music
基本となるコンセプトは単純。 sin( TAU * 440.0 * t ) と書けば、440Hzのサイン波が鳴る。
生成されるすべての音は、そのコンセプトの延長線上に存在する。
本来、ポリゴンに陰影をつけるための言語で、音を生成する。
謎の営み。やる必要がない。
あえて言えば、大量の処理をワンパスに詰め込んでも、並列処理の暴力でなんとかしてくれる。
実際、2500回のforループで大量のサイン波を生み出すコードが存在する。
4KB Introで使われるOidosというシンセサイザーから着想を得た。 https://www.youtube.com/watch?v=vAh7RJxTavY
GLSLコーダーの頭で、Modular SynthやMachine Liveを再解釈した結果。
Wavetableシンセから着想を得たアイデア。
本来は、Perlin NoiseのFBMテクスチャを使う予定であったが、パフォーマンスのわかりやすさを優先し、テクスチャやサンプルは一切使わない構成とした。 もちろん、シンセサイザーオタク頭でも考える。
FM・Unison・Arpeggio…… GLSLという戦場でも使える道具は使う。
一方で、フィルター・EQ・リバーブといった、通常の楽曲制作では必須となるエフェクトが使用不可能となる。
これらのエフェクトにはステートが必要となるが、GLSL Musicでステートを使うことはできない。
同じ境遇を持った楽曲制作環境として、チップチューンが存在する。
リバーブの使えないチップチューンにおいて、音に広がりを持たせるには、複数トラックを活用したディレイを付与することが一例として挙げられる。
また、メガドライブに代表されるFM音源を用いる際は、複数のパートが同じ周波数帯で干渉しないよう、オペレータのパラメータ調整を技巧に行う。
https://www.youtube.com/watch?v=gnQXgr6_YR4
7 Minutes
Revisionのレギュレーション上、ひとつのDemoが使える時間はローディング時間を含めて8分。 ローディング時間を除いて7分と20秒、しっかり使い切った。ちなみに140BPMでピッタリ256小節。
7分半に4曲を詰め込む。1曲あたり2分弱。
2分弱と言えば、音ゲー音楽である。
クラブにおける音楽体験を、ゲームセンターにおける1度のゲーム体験(100円・約10分)に詰め込む。
そのためには、本来クラブではあり得ない楽曲展開やテンポが要求される。
https://www.youtube.com/watch?v=UXqXnGW2VWE
140BPMは、おそらくテクノ音楽としてはやや早めである。
また、各セクションの展開は比較的早いペースで進んでいく。
とはいえ、システムの都合上、基本的には16小節のループを加工したものをつなげていくような形。
ライブコーディングの営みの性質、その見せ方・わかりやすさも加味すると、そこまで素早い展開を生み出すことはできない。
Live Coding
それを視聴者を目前にして行い、ライブパフォーマンスの体裁とする。
コーディングを知らない視聴者にとっては、音を生成する黒魔術。
言語や環境に精通した視聴者からは、次の展開を予想するための手がかり。
https://www.youtube.com/watch?v=cB_tm-NAYRk
コードを書くのは人間であるから、そこには人間的な不正確さ・限界が存在する。
一度に編集できるコードには時間的な制約が存在し、音楽的に理想の展開を生み出すことは難しい。
頭の中にあるロジックを素早くコードとして落とし込み、実行する。
そのプロセスを加速させる試みは多く行われている。
入力インタフェースとしては、キーボードとマウス。
作品としてのわかりやすさ・音楽的なおもしろさ・制作中の編集のしやすさを天秤にかける。
今回は、コピー&ペーストとブラケットへのジャンプを多用した味付けにした。
田所先生の、事前にコメントアウトされた状態でパターンをたくさん持っておく体裁を参考にした。
理由のひとつは、コード上で行える一つ一つの操作がモジュラーシンセと同程度に低レベルで、個人的にはわかりやすいこと。
もう一つは、音作りの楽しさ・音が変化することのおもしろさにフォーカスをしたパフォーマンスにしたかったことが挙げられる。
VJ
もちろん、先に紹介したEmixの存在が、このIntroにVJスタイルのグラフィクスをもたらした要因。
テクノ音楽を引き立てる、調味料として存在する。決して主役ではない。
ただし、ここはDemosceneという箱なので、少しビジュアルの味付けは濃くする。
ミニマルでかつジェネラティブなアプローチに近い絵が多く見れたので、非常に参考になった。
映像に色を使うことを検討したが、結局全素材モノクロで統一した。
Emixも含め、テクノのVJをいくつか見てみたときに、1枚に2色以上が含まれるケースが少なかった。
これは単にそういう文法なのかな。
楽曲に合わせて、映像を出す。
実際シーケンスを組んでみると、どのような順番で・どのようなタイミングでこれを出すか、だいぶ難しい。
これってこんなに難しいのでいいんだっけ。
カラーグレーディングの本を買って読んでみたものの、VJ的な映像に対する答えは「トレンドを捉える」程度のことしか提示されなかった。
フィーリングを信じろ。
Purpose
なぜ64kを作るのか。なぜGLSLでTechnoを作るのか。なぜLive Codingをするのか。なぜVJをするのか。
64kについては特に、その合理的でないワークフロー・プラットフォーム・メディアムに、多くの人が疑問を持つことは分かっている。
自分の中では、一旦「価値観・美的感覚を他人と共有するための手段」であると結論付けた。
「64KB」「GLSL Music」「Live Coding」「Techno」「VJ」。これらの文化への尊敬・もしくは自己顕示だと思う。
創作文化がもっとおもしろくなるためのピースを自分が持っていると信じている。
それを投球することによって、コミュニティに属する個の、表現に対する渇望を促進するものであることを願う。
もっとおもしろいもの見たい。
Demoscene
Demoscene。
コンピュータを用いた創作活動の手段が飽和した現代において、未だに古くから良しとされた美的感覚を重んじる、伝統芸能。 やはりDemosceneのコミュニティには本当に感謝している。
自分のアートに対する平衡感覚・価値観を正常に保ち続けてくれているのは、シーンで活動する人々の存在があってのことだと思う。
最新の技術や手法を取り入れつつ・時には批判的に立ち向かいつつ、自分の感覚・信念に基づいた創作活動を続けられる場がある状態は、本当に貴重なことだと思う。
あえて言うと、日本でDemosceneがアクティブでないのは残念ではある。
幸い、友人とデモパーティーを開催できるほどのリソースは存在するが、コンスタントに作り手とのコミュニケーションができない状態であるのは結構寂しい。
たぶん、全部英語とタイムゾーンが悪い。
全人類日本語喋ってくれ。全人類UTC+9で生活してくれ。